結論「グアムでは治療費用400万円は必要」
先に結論を書いておきたいと思います。
「疾病治療費用」「傷害治療費用」の補償額は、それぞれ最低400万円は必要。あと注意したいのは、医療費が高額になる医療搬送(グアム⇒日本は約120万〜2,000万円)のとき。グアムでは重病の場合(特に脳や心臓系)は医療搬送となる確率が高いので、医療搬送費用をカバーする「救援者費用」の補償額がポイントです。
このページの目的
海外旅行保険は、本当に「支払い無制限」のものが必要なのでしょうか?本当に、クレジットカード付帯の保険だけでは不足するのでしょうか?
このページでは、グアムの医療費の価格を実際に見て、海外旅行保険をどれくらい掛けておく必要があるか、クレジットカード付帯保険なら、どれくらい不足するのか、ということについて考えてみます。
※東京海上やAIU、JI傷害火災、HS損保などの保険会社が公表しているデータから、できるだけ客観的に見ていきたいと思います。(記事下に、すべての出典リンクを掲載)
(※ハワイの医療費・アメリカの医療費については別ページで解説しています。)
判断基準
治療費用に関して↓
グアムで盲腸手術:約90万円
- ⇒日本の1.5倍くらいの医療費(日本の10割負担額と比較)
- 集中治療室(ICU/CCU)の額: 11万~25万円/日(*4*5) ⇒20日間220万~500万円
救援者費用に関して↓
医療費の価格&実際の事例
盲腸(虫垂炎)手術費用は総額約90万円
盲腸手術の費用データ
・56~64万円(手術代のみ。公立病院、2013年*4)
・56~74.5万円(手術代のみ。公立病院、2009年*5)
・86万円(病室代/看護費用/技術料など総費用。2008年*6)
・56~78万円(病室代/看護費用/技術料など総費用。2004年*3)
ちなみに日本の医療費は↓こんな感じ。
●盲腸手術:総額約60万円
●個室入院:一日3〜10万円
●ICU入院:一日8〜10万円
(出典2008年*2)
入院時の部屋代は個室1日5万円
病院の部屋代(1日あたり)
・公立病院個室5万円〜
・公立病院セミ個室4.5万円〜
(2013年*4)
※薬代、X線代、検査費は含まず
集中治療室(ICU/CCU)の費用
集中治療室(ICU/CCU)の費用データ(1日の価格)
・11万円(公立病院、2013年*4)
・25万円(公立病院、2009年*5)
その他の治療費用のデータと事例
軽い治療に対しても、高額な医療費が必要です。少し医者に診てもらうだけで、すぐに10万円は軽くかかると覚えておきましょう。
外来初診料(胃腸炎)(2013年*4) | 2~3万円 |
入院保証金(2013年*5) | 見積金額の50% |
アキレス腱断裂の手術費用(2013年*4) | 121万円 |
テーブルの角に顔をぶつけ鼻と目の間を骨折(年不明*7) | 20万円 |
釣り針が指に刺さり抜けなくなる(2012年ナウい日記) | 11万円 |
下痢と嘔吐で受診(年不明*7) | 11万円 |
転倒し、顔から流血(2013年グアム子育て、移住生活) | 5万円 |
↑以上の事例は300万円未満のもの。下痢と嘔吐の受診で11万円ですから、決して安くはないですね。。。
↓300万円以上の高額事例も見てみましょう。まずは医療搬送がない場合。
300万円以上の高額な事例(医療搬送なし)
状況(年度、出典) | 入院日数 | 保険金支払額 |
---|---|---|
溺れる。原因は心筋梗塞(2013年*1) | 5 | 352万円 |
溺れ、意識不明(2007年*1) | 3 | 337万円 |
以上のデータを見て、グアムで治療費用は最低400万円必要、だとわかります。
↓次に、さらに高額となる医療搬送が必要になったときの費用を見てみましょう。
グアムから日本へ移送費&実際の事例
↓定期便か、チャーター便かで、かなり価格が変わります。
定期便利用の場合
合計 約93万~121万円
(2013年*4*5)
・付き添い医師1名、看護師1名
・座席を6~10席確保し、ストレッチャー利用
・定期便のメリットは、安いこと。
・デメリットは断られることもあること(感染症の疑いや、繁忙期など)
チャーター便利用の場合
合計 約750万~2,000万円
・チャーター費用 約640万~1,900万円以上
(2012年の事例*1、2011年*8 チャーター便の費用は飛行距離による。チャーター機の基地→搬送出発地→日本→基地、までの全ての距離に約80万円/kmの費用がかかる)
・その他費用 約100万円
(その他費用の内訳)付添い医師1日20~40万円、付添い看護師1日約10万円、医療機材4万円、現地病院〜空港の車移送3~5万円、宿泊費用(遠路の場合)1人1泊1.5万円(以上、2009年*5)、成田空港〜都内病院の車移送 10~25万円(2013年*9)
・チャーター便のメリットは断られないこと。デメリットは高額であること。
アメリカから日本への医療搬送の事例
状況(年度、出典) | 入院日数 | 保険金支払額 |
---|---|---|
腹痛で受診。膵炎・腹膜炎・腎不全。医師・看護師とチャーター機で医療搬送。(2012年*1) | 26 | 2,717万円 |
階段を落下し頭部強打。硬膜下・硬膜外血腫。医師・看護師と医療搬送。(2014年*1) | 7 | 726万円 |
車のブレーキ故障で衝突。全身を打撲。腰椎圧迫骨折。看護師と医療搬送。(2008年*1) | 9 | 300万円 |
↑この医療搬送のデータを見ると、チャーター機利用の事例が飛び抜けて高額なのがわかります。チャーター機を利用しないとすると、次の最高額の726万円から定期便医療搬送費用の120万円を引くと、600万円。治療費補償として600万円あると、グアムでは、わりと安心できる、と言えます。
以上が、医療搬送のデータです。
医療搬送が必要かどうかの判断=大幅な節約
ここまでデータを見てきて、グアムでの「治療費用」の項目は、最低400万円で、600万円あると結構安心できることがわかりました。
しかし、問題は、「救援者費用」の項目です。へたすると2,000万円にもなる医療搬送よって、どうしても海外旅行保険の保険料が高くなってしまいます。
保険代理店に尋ねてみたところ「医療搬送も、やるかどうかは自分の判断(家族判断)になります」とのこと。また、医療搬送の方法も自分で選べるようです。
じゃあ、どうすべきか。
グアムでは、医療水準の問題から、医療搬送の可能性が他の地域より高いです。なので、いくら保険料を節約したくても、医療搬送そのものを使わない、という選択肢は、おすすめできません。
外務省のホームページにも、↓こう書かれています。
グアムでの医療には限界もあり、脳内疾患や心臓疾患など重度の患者には対処することが困難です。そのため、精密検査や高度な手術等、より重大かつ長期治療が必要な場合には、日本に一時帰国しての入院や集中治療を受けることが肝要です。
引用元:外務省 海外安全ホームページ グアム 3 (3)医療事情
医療搬送は必要。でも、それでも、もう少し節約したい、という人もいるでしょう。
そこで考えてみると、残された節約の選択肢としては、「チャーター便は利用しない」と割り切ること、これくらいしかないと思います。つまり、「医療搬送が必要な場合は、定期便でお願いする」というようにしておくのです。
幸い、グアムの病室の価格は、アメリカ本土ほど高くありません。個室よりも、もっと高額となる、集中治療室(ICU/CCU)だとしても、1日11万~25万円。20日間ずっと集中治療室でも220万~500万円です。これなら、チャーター便利用の750万~2,000万円よりは、かなり節約になります。
一応、言っておきますが、もちろん、保険を最高額まで掛ける余裕のある人は、保険を手厚くして、チャーター便の医療搬送も可能なようにするのが、一番良いんですよ。それが一番安全ですから。
ただ、やはり、一年以上の長期滞在の人など、高額な保険料だと厳しい、という人もいると思うので、「なんとか節約するとしたら」という前提の話で考えてみました。
医療搬送はシニア層(65歳以上)が多い
では、次に、医療搬送を実際に利用した人は、どんな人たちだったのか、また、どんな理由で医療搬送に踏み切ったのか、という部分を見てみましょう。
ジェイアイ傷害火災が発表しているデータ(出典)によると、こんな事実が判明しています。
- 300万円超の高額医療事故はシニア層(65歳以上)が約半数である
- 2014年度 高額医療事故TOP5のうち4件がシニア(9,335万円〜1,888万円)
また、ジェイアイ傷害火災とエイチ・エス損保が公開している合計500件以上の事故事例(*1*7)を一つ一つ調査したところ、↓このような事実もわかってきました。
- 1000万円超の高額医療事故73件のうち61件(84%)が医療搬送。
- 医療搬送を病気に限定すると、脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞など、シニアに起こりやすい病気が多い。
医療費を高くしているのは、やはり医療搬送であり、その医療搬送を利用するのはシニア層(65歳以上)が多い。
ということは、65歳以下の人なら、医療搬送の可能性は低めなので、「チャーター便は使わない」という選択も、やはりアリなんじゃないかと思います。
まとめ
- 治療費用は、最低400万円。600万円なら、わりと安心。
- 救援者費用は、医療搬送でチャーター便を利用しないなら300万円。チャーター便も必要なら、750万~2,000万円
救援者費用に関して
医療搬送はチャーター便を使わず定期便で、とする場合、救援者費用は300万円でいいでしょう。300万円あれば、家族が日本から駆けつける費用分と、自分の定期便での医療搬送の費用分の、両方を支払えるからです。300万円という数字なら、年会費無料クレジットカードでも2枚でカバーできる額です。
ただし、チャーター便も欲しい場合は、救援者費用は最低750万円です。確実にするためには2,000万円分を準備しておきましょう。これらの額になってくると、有料の海外旅行保険を使わないと難しいです。
1,2週間〜1ヶ月くらいまでの長さの旅行でしたら、保険料もそう高くないので、有料保険に入っておくことをオススメします。有料の海外旅行保険も、各社かなり差があるので、上手に選ぶようにしてください。こちらで詳しく比較・分析しています。⇒海外旅行保険フリープラン(バラ掛け)比較ランキング
治療費用に関して
治療費用400万円という数字は、クレジットカード付帯保険でカバーするとなると、カード2枚でカバーできる額です(治療費用補償など死亡補償以外は、カードを複数持っていると、限度額を上乗せできます)。ゴールドカードやプラチナカードも治療費用300万というのが多いので、やはり2枚、準備が必要です(参考:ゴールドカード比較表)。
わりと安心レベルの600万円が必要と考えた場合は、3枚です。年会費無料カードでも1枚で治療費用200万円の補償のものもありますので、そういうカードで補強すると、節約できます(参考:一般カード比較表)。
ただし、注意点としては、「カード付帯保険は90日間が最長」ということです。3ヶ月以上の場合は、別の節約方法が必要になります。こちらの記事にまとめています。⇒半年〜1年など長期海外旅行保険の節約方法3つ
参考にさせていただいた文献リスト
保険会社の皆様、貴重なデータの公表、ありがとうございました!
*1 ジェイアイ傷害火災HP 海外での事故例(2002~2014年)
*2 ジェイアイ傷害火災HP 海外の医療事情(2008年のデータ)
*3 ジェイアイ傷害火災HP 海外の医療事情(2004年のデータ)
*4 東京海上日動 世界の医療と安全2014年
*5 東京海上日動 世界の医療と安全2010年
*6 AIU 海外での盲腸手術の総費用2008年(AIU海外留学保険総合案内サイト)
*7 エイチ・エス損保 旅行先でのトラブル事例
*8 チャーター機の料金は、アークEFI航空情報センター 航空機チャーター事業部(参考料金一覧)を参考に「1時間80万円×2(往復)×日本までの飛行時間(google mapより)」で計算。
*9 ④搬送費用 先端医療情報サイト ハロードクター
*10 外務省 在外公館医務官情報 アメリカ合衆国(ニューヨーク) 4.衛生・医療事情一般
参考為替レート
以下、参考にしたデータ・情報
2013年 1ドル97〜100円
2009年9月7日 1ドル=約93円
2008年2月 1ドル=約104〜109円
2004年3月 1ドル=約111円